司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成15年度旧司法試験刑法2(玲子のひとりごと・答案編)

平成15年度旧司法試験刑法2

答案

1 甲が運転免許証に「甲」と記載された紙片を貼った行為
 「偽造」とは、文書の作成名義人と作成者の人格の不一致を生じさせることをいう。
 本件では、一般人の認識に照らせば、多重債務を負わない甲が作成名義人であると理解し、他方作成者は多重債務を負う乙こと甲であるから、人格の不一致があり偽造に当たる。

 また、紙片を貼ったもので、明らかに加工されたものとわかるが、イメージスキャナーによる利用であれば一般人も加工の事実を容易に知りえないので、文書に対する信用を害しうる。以上より偽造に当たる。

 イメージスキャナーに読み取らせる行為は情報の作成にすぎず、文書の偽造とは言えないとも考えられるが、文書が存在するのと同様の表示をさせ、公共の信用を害するものであるから、偽造に当たる。そして、それを相手に提示しているため公文書偽造及び同行使罪が成立する。
2 甲が借り入れ申込書に甲名義を記載した行為

  上記同様、偽造に当たり私文書偽造及び同行使罪が成立する。
3 X社からキャッシングカードの交付を受けた行為
 キャッシュカードは借財を可能にする利用価値があり、財物性がある。その他要件を充足するため、詐欺罪が成立する。
4 甲が当該カードを現金自動支払機で用いて30万円を引き出した行為
 窃盗罪が成立する。
 なお、この窃盗罪は、カードの交付に係る詐欺罪とは別に成立する。一方が30万円の金銭、他方が利用価値のあるカードの取得であるためである。

まず、一般人にとって明らかに偽造だとわかる場合は偽造とは言えないのではないか、という論点は忘れていたわね。言われてみると、その通りなんだけど。

それと、偽造に当たるのかどうか、という点は、本当に難しい。

名義人の定義については、「一般人が文書全体から判断する文書の作成主体」とかになると思うのよね。それに当てはめると・・・あら?そもそも運転免許証の作成名義人って・・・公安委員会とかじゃない?それを甲が内容を変えて作成している時点で既に偽造では?

・・・

もちろん100%の自信があるわけじゃないし、判例も忘れかけなんだけど、今の私の考えでは「偽造に当たることは明らか」だと思ったので、答案のうちのあてはめは取り消しました。

さて、気を取り直して。

申込書についてだけど、名義人の定義については、「一般人が文書全体から判断する文書の作成主体」とかになると思うのよね。そうすると、借金の申込書だし、乙は多重債務者で金融機関は乙にはこれ以上貸さないわけだし、通称だし・・・ってことからすると、一般人は、作成名義人を「債務のない甲」だと理解するって書くことはそんなに難しいことじゃないはず。

しかも、ちょっと工夫して規範の「一般人」を「その文書の受取手として通常想定される人」とかに変えたら、文書の読み手を金融機関に限定できるから、より説得的かも。

最後に、とりあえず今回は、全部成立させたけれど、もしかしたら判例とかによれば不成立になっているのかもしれないわね。その辺は、どっちかっていえば判例にならう方がいいのかもね。