平成25年度司法試験刑法(玲子の指導)2
玲子は続いて答案を読み続けた。
答案には、乙の認識に関し「因果関係の錯誤」の論点が記載されていた。
「あーあ、①因果関係の錯誤が故意を阻却するかって問題と、②そもそも故意があるのか、って問題がごっちゃになってるじゃない」
この二つを混ぜて書いたら、訳の分からない文章になるのが当然だ、そう思いながら、延々と記載されている故意部分を読み飛ばした。
そして、建造物等以外放火罪の検討部分を読み始める。
そして、愕然とする。
「公共の危険の認識を不要にしたの!?(しかも、大した理由もなく、ほんの2,3行で?)」
玲子の思考を要約するとこうなる。
答案というのはなるべくおもしろく、かけるのがよい。
おもしろく、というのは多くの事実を使うことや、登場人物二人が二人いる場合には、差が出るように記載するということだ。
本問では、甲と乙は、「駐車場には他の車がない、と思ったのに、実際にはあった」という勘違いをしており、しかも、「乙は現場でその状況を見ている」が「甲は知らないままだった」という違いがある。
後の方の食い違いは、「乙は食い違いに気づいてその場でやめることができたが、甲はできなかった」という差になる。
こういう違いをうまく答案に反映させてこそ、出題者の意図にこたえることになる(可能性が高い)。
それなのに
「公共の危険の認識は不要です。「よって」とかいてあるからです」
なんて答案を書いたら、出題者をバカにしてる。
こういう思考のもと、玲子は愕然としたのであった。
あとは、C車(B車の燃焼により、燃え移りそうになった車)についても多少記載があったが、C車に110条1項が成立するわけもないので、読むことをやめた。
一息ついて、次は甲の罪責。
2頁にわたり、
間接正犯は成立しない→教唆犯が成立する
と記載されていた。
何度読んでも
間接正犯は成立しない→教唆犯が成立する
と記載されていた。
・・・
間接正犯は成功しかけたんじゃなかったっけ・・・
だから、後は未遂とか、そもそも睡眠薬を飲ませてトランクに入れて、それを乙に引き渡す行為が「何罪なのか」とか、そういう方向に進むんじゃ・・・ないの?
もう考える力も尽きた玲子は、答案の最後に、甲に関する放火罪の記述を見ながら
「もし認識の可能性を要する」
とかの規範を書いていれば、あてはめができたのに
と思いながら、答案を閉じた。