司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成15年度旧司法試験刑法1(玲子のひとりごと・答案編)

平成15年度旧司法試験刑法1(玲子のひとりごと・答案編)

 


第1 甲の罪責
1 Aを殴打した行為
 同行為は、殺傷能力のある道具を用いて、後頭部という身体の枢要部を力任せに殴打する行為であり、死亡結果発生の現実的危険性ある行為であり、殺人罪の実行行為に当たる。
因果関係についてみると、まず甲の殴打行為は危険性の高い行為である。しかし、乙がAの生存に気付いたのに殺意を持って殺害することは異常性が高いといえる。それに加え、死亡の原因も窒息死であり乙の行為による。また、窒息については甲の関与したという事情もあるが、この時甲はAは死亡していると認識していたのであるから、因果関係の判断に当たっては考慮すべきでない。以上から、死亡との因果関係は否定されると解するべきである。
 したがって、Aに対する殺人未遂罪が成立する。
2 生き埋め行為

この時に、甲は死体遺棄罪の故意を有していた。この場合、当然ながら重い殺人罪は成立しない。また、殺人罪死体遺棄罪は、保護法益が人の生命と社会の風俗とで異なるので、構成要件が重なり合わないため、軽い死体遺棄罪も成立しない(結果が発生していない)。

ただし、甲は、Aの死を確認する義務に違反して生き埋め行為に出てAを窒息死させているので、重過失致死罪が成立する。
第2 乙の罪責
穴の中にAを投げ込み土を掛けた行為によりAは窒息死している。よって、Aに対する殺人罪が成立する。

 

重過失致死罪というのは、気づかなかったわね。

それにしても、いくつか答案を見てみたけれど、「共犯」に関してはあまりうなづけるものが少なかったわ。今考えているのは、乙についての承継的共同正犯(否定)、あるいは罪名の問題かと思っているわ。たとえば、

甲:重過失致死罪の共同正犯

乙:殺人罪の共同正犯

みたいな、とにかく一緒になって犯罪を犯したら、それだけで「共同正犯」という名前を付けようという説が確かあるわよね。こういう考え方はやめよう、ということを書いたら、一応共犯のことを答案にかけるわね。

最後に、甲について因果関係を否定すると、因果関係の錯誤が書けなくなるなあと思ってちょっと気になったのよね。でもよく考えると「錯誤」は因果関係に限ったわけじゃないから、Aの死についての「錯誤」を扱っている以上、殺人未遂でも出題趣旨を網羅できるわね。