平成14年度旧司法試験刑法1
問題文
甲は、Aに電話で罵倒されたため憤激し、A方に赴けば必ずけんかになるだろうと思いながら、この機会にAを痛めつけようと考え、こん棒を用意するとともに、友人の乙に、こん棒を持っていることは隠し、これからA方に話し合いに行くが、けんかになったら加勢してほしいと依頼した。乙は、気が進まなかったが、けんかの加勢くらいはしてやろうと考えてこれを承諾し、一緒にA方に行った。甲は、Aを呼んでも出てこないので裏口に回り、乙は、玄関先で待っていたところ、出てきたAが乙を甲と取り違え、いきなり乙に鉄棒で殴り掛かってきた。そこで、乙は、Aの攻撃を防ぐため、玄関先にあったコンクリート片をAに向かって投げたところ、コンクリート片はAの顔に当たり、顔面擦過傷を負わせ、さらに、Aの背後にいたBの頭にも当たり、頭部打撲傷を負わせた。なお、コンクリート片を投げたとき、乙はBがいることを認識していなかった。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(ただし、特別法違反の点は除く)
いかにも旧司法試験って感じね。しかも難しい・・・
答案構成
第1 乙の罪責
1 コンクリートをAに向けて投げた行為:傷害罪・正当防衛
2 Bに打撲傷を負わせた行為:傷害罪・緊急避難(?)
第2 甲の罪責
1 乙のAへの行為:傷害罪
2 乙のBへの行為:傷害罪(?)
乙は、Aに対しては正当防衛。Bは侵害者ではないから緊急避難のみが問題かな。
それと、傷害罪についてはBへの故意があるのかどうかという論点もあるわね。
甲は、積極的加害意思があるから、正当防衛は成立しないのよね。Bに対しても同様。主観的要件は共犯者間で個別に考える、というのが理由ね。
では答え合わせをしてみましょう。