平成19年度旧司法試験刑法2
答案
第1 甲の罪責
1 うそをついて制帽と業務日誌を持ち出した行為
偽計業務妨害罪は成立するか。
権力的公務は「業務」にあたらない。なぜなら,妨害を排除する実力がある以上重ねて保護する必要がないからである。他方非権力的公務には,そのような実力がなく,民間業務と同様に保護すべきであるから,「業務」にあたる。
本問で,Xは警察官であるが、権力的公務を行っていたわけではないから、業務に当たる。以上から,偽計業務妨害罪が成立する。
2 制帽と日誌の占有侵害
まず、詐欺罪は成立しない。なぜなら,甲のうそは処分行為に向けられていない。
窃盗罪も成立しない。不法領得の意思、すなわち権利者を排除して所有権者として振舞う意思(権利者排除意思)と,経済的用法に従い利用処分する意思(利用処分意思)のうち、後者尾が認められないからである。
したがって、制帽につき器物損壊罪が,業務日誌につき公用文書毀棄罪が成立する。
3 制帽を自宅に保管しておくことにした点
占有離脱物横領罪が成立する。もっとも,制帽につき既に器物損壊罪が成立している。毀棄と横領は,本来の権利者から物の利用可能性を奪うという点で法益の共通性がある。よって,重い器物損壊罪に占有離脱物横領罪は吸収されると考える。
第2 乙の罪責
1 制帽を返却せずに売却するよう唆している行為につき占有離脱物横領教唆が成立する
2 業務日誌を運搬した行為について,盗品等運搬罪が成立する。
3.Xに対する恐喝行為
恐喝罪が成立する。
また,脅迫による公務執行の妨害でもあるから,公務執行妨害罪も成立する。
なお、甲の委託に反した点については、背任も横領も成立しない。甲に財産上の損害が生じないからである。
まず、権力的公務・日権力的公務に分ける点はいいんだけど、警察であるだけで、権力的公務に分ける答案もあるわね。私は、具体的に行っていた公務が権力的公務でない限り、偽計等からも保護されるべきだと考えるわ。
器物損壊罪と占有離脱物横領の適用関係!これはいつも気づかないのよね。小さな論点だけど、結構多くの本に載っているから、落とさないようにしなきゃ。
盗品等運搬罪については、財産罪の被害品ではないことを理由に成立を否定する人もいるみたいね。でも毀棄罪は財産罪よね。
ああ、もう受かる気しないわね・・・