司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成22年度旧司法試験刑法2(玲子のひとりごと・答案編)

平成22年度旧司法試験刑法2(玲子のひとりごと・答案編)

 

第1 内金名下に7万円預かった点

 詐欺罪が成立する。

第2 7万円を費消した点

1 Bとの関係

 詐欺罪が既に成立しているので、費消は不可罰的事後行為であり、横領罪は成立しない
2 A社との関係

 Bに対する欺罔行為により、A社はBに対してオーダーメイドのスーツを制作する義務を負うことになる。したがって、当該7万円はその対価としてA社に帰属すべきものであるから、それを費消したことはA社に対する横領罪が成立する。

第3既製品スーツの持ち出し等について

 

 甲が、Cに虚言を述べて甲への占有移転がなされているため詐欺罪が成立する。なお、Cは甲の虚言を信じて持ち出しを許可しているため、意思に反する占有の移転ではなく、処分行為があるといえる。

第4 13万円の現金支払いを受けた点

欺罔により、内金を除く13万円を支払っている点は詐欺罪が成立する。

この点、Bが満足していることから、詐欺罪における欺罔行為があったか否かが問題になりうるが、Bはオーダーメイドであることを大きな理由の一つとして購入したのであるから、その点は取引における重要な事実をだましたといえ、欺罔行為といえる。またそれにより生じた錯誤に基づく処分行為自体が損害である。

第5 13万円を費消した点

 前記のとおり、Bとの関係では不可罰的事後行為、A社との関係では業務上横領罪が成立する。

 

7万円と13万円については、Bとの関係で不可罰的事後行為であることを指摘しないといけなかったわね。

それと、A社との関係だけど、業務上横領にならないという意見もあるのだけど、私にはあまり理解できないわね。

そういう見解の理屈としては、この詐欺は甲が勝手にやったことだから、A社とは関係ないお金であるということみたい。でもね、自分がBだったらA社に対して請求するし、A社も供給義務あり賠償義務なりを負うと思うのよ。だって、甲はA社の従業員なんだから。そうすると、この合計20万円は、A社に帰属すると理解するんじゃないかしら。

それから、Cに対する詐欺、これを窃盗と理解する見解もあるみたいね。でも、Cはすぐ返してもらえると思って、持ち出しを「認めている」わ。これは処分行為以外の何物でもないと思うけど。「だましたのに窃盗になる」例は、「あ、UFO!とか言って、相手の注意をそらして、その隙に持ち出す」パターンよね。それとは違うでしょう・・・まあ、窃盗ではないか、とは考えにくいから、きちんと要件を書いてあてはめるのが大事ってことかしらね。