平成22年度旧司法試験刑法1(玲子のひとりごと・答案編)
第1 甲の罪責
1 B社に侵入し、現金を盗んだ点につき、建造物侵入罪及び窃盗罪。
2 B社建物が全焼したことについて
不作為の実行行為性は、自由保護の観点から、作為義務、作為の容易性・可能性(及び作為との構成要件的同価値性のある場合)に限り、肯定すべきである。
本問では、出火の直接の原因は甲の過失であり、また、甲以外に消火を期待できる者はいなかった。(その他あてはめ)→実行行為性あり。
次に因果関係を検討する。因果関係は当該結果を行為者に帰責できるかという規範的判断であるから、行為者の行為の危険が現実化したといえるかどうかにより判断する。
あてはめ(丙は何か行為をしたわけではない、甲の行為それ自体焼損の危険を有する行為であること等)→肯定
罪数はかすがい減少
第2.乙の罪責
1.乙がA社通用口の施錠を外した行為について検討。
2.共犯処罰の根拠は、正犯の惹起する結果への因果的寄与にある。従って、物理的又は心理的に正犯の犯行を容易にしたかという観点から検討すべきである。
甲がB社に侵入した行為は甲の新たな犯罪実行の意思である→いずれもなし。
3.よって、因果性を欠き無罪
第3.丙の罪責
1.甲同様の規範→あてはめ→放火罪既遂
なお、丙が発見した時点ですでに甲の罪責は既遂になっているが、それでも、消火すればそれ以後の焼損が防げた以上、丙は発見時点以降の焼損について放火既遂となる。
楽勝、と言いたいけれど、一つ見落としたわ。
丙が発見した時点ですでに甲の罪責は既遂というところね。
この事実をどう使うか、だけど、たとえば丙の介在を異常な介在として理解して、甲の行為との因果関係は切れたと書く人もいるでしょう。その場合には、それでも甲は丙が登場するまでにすでに既遂になっている、という形で使えるわね。
それと、私みたいに因果関係が切れていないという場合には、因果関係の問題が、あくまでも丙の登場以後の焼損部分に限って問題になることをきちんと指摘しておかないといけないわね。
つまり、丙の登場前後で、焼損①と焼損②があるとすると、焼損①は甲しか罪責を負わない、そしてこれだけですでに既遂になる。そのうえで、焼損②について甲は罪責を負いますか、というのが因果関係の問題ね。
丙については焼損①について罪責は負わないけれど、焼損②については罪責を負うことになるわね。
結局、あんまり使う必要のない事実ってことなのかしら。
それにしても、不作為犯は書くことが決まっているから楽な気がするわね。