平成16年度旧司法試験刑法1 答案
第⒈ 甲の罪責
1 ナイフで刺した行為から殺人未遂罪が成立する
2 43条但し書きの趣旨→責任減少
→「自己の意思により」とは、自由な意思により中止した場合をいう。またこの趣旨から、「中止した」とは、実行行為終了後においては、結果発生防止の為の真摯な行為をいう。
3 自己の意思によりとは言えるが、止血したのみでは真摯な行為とは言えない→中止犯不成立
第⒉ 乙の罪責
1 甲を逃げさせた行為が殺人罪に当たるか
2 不作為の殺人の要件:①作為義務の存在、②作為の可能性・容易性
本件では、ア Aが放置されれば失血死する状況にあったことと、イ 甲を遠ざけて、自分がAの危険を引き受けていることから、①が満たされ、119番通報は容易であるから②が満たされる。
3 以上より殺人未遂罪が成立する
下線部を思いついたのは、これを書いているときなのよね。
そもそも不作為が「殺人」といえるためには、人が死の危機に瀕していないといけない。そのことをどの要件の中で書くのかはよくわからないけれど、作為義務の中に盛り込むこともできると思うわ。
そして、この事実は、不作為の殺人においてもっとも基本的な内容だから、落とすわけにはいかないわね。
実務についていると、「そもそも殺人か?」なんて考えることができるから何とか思いついたけど、受験生として答案を書いていると「不作為の論点」というふうに見てしまうかもしれないから、かえって落としやすいのかも。
まあ、きちんと要件を覚えている人は、結局あてはめるだけだから、気づかないということがないのかもしれないけどね。