平成16年度旧司法試験刑法2 答案
第1 甲の罪責
1 Bに本問土地を売却した行為
(1)横領罪の検討
横領罪の構成要件は①委託信任関係に基づく占有②他人の物を③横領したことである。①甲は売主であり、②本件土地の所有権はAに移転している。③もっとも、売買契約を締結するだけで登記を移転していない場合は、いまだ売主に確定的に所有権が移転したとは言えないため、③横領したとは言えない。よって横領罪は成立しない。
(2)詐欺罪の検討
甲はBを欺いて1100万円を交付させているが、そもそも所有権をBが取得しうる以上、この欺いた行為は詐欺罪における欺罔行為には該当しないため、詐欺罪は成立しない。
2 C銀行に本件土地の抵当権を設定した行為
上記同様のあてはめから、横領罪が成立する。
上記同様のあてはめから、詐欺罪は成立しない。
エ 以上,かかる行為は,横領罪にあたる。
(3) 乙に本問土地を売却した行為
上記同様のあてはめから、横領罪の構成要件を満たす。
先に抵当権設定行為が横領罪となるため、不可罰的事後行為ではないかと考えられる。しかし、甲は依然としてAに所有権を移転登記をしなければならない立場にあり、乙に対する所有権移転は先の横領行為で評価しつくされていない。
よって,別個に横領罪が成立する。
以上、併合罪
2 乙の罪責
横領罪の共同正犯とならないか。
65条は、1項の「身分によって構成」との文言及び2項の「刑の軽重あるとき」との文言から、1項は真正身分犯の成立及び科刑を、2項は不真正身分犯の成立及び科刑を規定したものと解する。そして65条1項により,共同正犯が成立する。
以上
いや・・・全然わかっていなかったわ。
既遂時期は重要ね。登記しなければ、Aはまだ権利を確定的に害されているとは言えないものね。既遂時期を遅らせる解釈はなかなかに説得的だわ。
まずBへの売却は詐欺罪に当たらないといいうるのねー確かに、Bは所有権を移転されれば、先に買主がいたことなんか、特にどうでもいいわよねーもちろん、そうではなくて、もろもろの面倒が生じる恐れがあるから、売買契約における重要な点であり、欺罔行為に当たる、ということもできるのでしょうけど。
それから抵当権設定についても、詐欺罪の検討をしうるのねーおそらくBへの詐欺罪の成否と結論が同じになるのでしょうね。
不可罰的事後行為にならないか、というのもなかなか気づかないわ・・・