平成17年度旧司法試験刑法1(玲子のひとりごと・検討編)
問題文
甲は,自己の取引先であるA会社の倉庫には何も保管されていないことを知っていたにもかかわらず,乙の度胸を試そうと思い,何も知らない乙に対し,「夜中に,A会社の倉庫に入って,中を探して金目の物を盗み出してこい。」と唆した。乙は,甲に唆されたとおり,深夜,その倉庫の中に侵入し,倉庫内を探したところ,A会社がたまたま当夜に限って保管していた同社所有の絵画を見付けたので,これを手に持って倉庫を出たところで警備員Bに発見された。Bが「泥棒」と叫びながら乙の身体をつかんできたので,乙は,逃げるため,Bに対し,その腹部を強く蹴り上げる暴行を加えた。ちょうど,そのとき,その場を通りかかった乙の友人丙は,その事情をすべて認識し,乙の逃走を助けようと思って,乙と意思を通じた上で,丙自身が,Bに対し,その腹部を強く殴り付け蹴り上げる暴行を加えた。乙は,その間にその絵画を持って逃走した。Bは間もなく臓器破裂に基づく出血性ショックにより死亡したが,その臓器破裂が乙と丙のいずれの暴行によって生じたかは不明であった。
甲,乙及び丙の罪責を論ぜよ(ただし,特別法違反の点は除く。)。
なんか、こういう問題を見ると、今の試験と何にも変わってない気がするわよね。
ちょっと事実が増えただけ。
さて、ではまず答案構成を考えてみましょうか。
第1 乙罪責
1 忍び込んだ行為(詐欺罪)
2 盗み出した行為(窃盗罪)
3 乙・丙がBを蹴った行為(事後強盗致死)
(1)実行行為
(2)結果
(3)因果関係
(4)実行の意思
第2 丙の罪責
1 Bをけった行為(事後強盗致死)
第3 甲の罪責
1 そそのかした行為
(1)住居侵入の教唆
(2)窃盗の教唆(※)
(3)事後強盗の教唆(?)
こんな感じかしら・・・
まずは乙から書いて甲を最後にするのがいいでしょうね。実際に起こったことを確定させた方が甲を書きやすいから。
乙について特に語るべき点はないと思うんだけど・・・乙と丙のどちらの暴行からBが死亡したかがわからない、という点は、何か問題になるのかしら・・・わからないわ。
丙については・・・あ!身分犯か!事後強盗は「窃盗が」とあるから、それに加功出来るかという論点ね。たしか、真正身分とか不真正身分とかいうと思うけど・・・とにかく、身分犯に協力する形で犯罪にかかわれるから、問題ないということを書こう。
最後に甲は、窃盗の未遂の故意しかないのよね・・・やっぱりその故意の限度でしか処罰できないということになるのかな。
さて、解答を見てみましょう。