仕事のない土曜日、玲子にメールが届いた。
「刑法の答案を見てもらえませんか」
添付ファイルには平成29年度の刑法の答案。
「こっちは忙しい実務家弁護士よ、人の答案なんか見ている暇ないわよ」
とひとりごとを言って送り主を見ると、どこかで見た名前。
たしか・・・ロースクールの後輩!
司法試験を受かった者はおそらく皆そうだが、後輩を指導したいと思っている。
ただ、時間がなかったり、能力がなかったり、昔はあったが今はなくなっていたり・・・
そういういろいろな制約のために、教えられないのだ。
玲子にしても、試験を受けてから、もう4年が経とうとしている、果たして教えられるのか・・・
そう考えながら、とりあえずネットで問題文を読み、そのあと、答案を見る。
「は?」
玲子は答案の出だしを見て驚きの声をあげる。
そのあと、さらに読み進めて
「・・・」
声が出なくなる。
とりあえず送られた答案をプリントアウトして、見間違いではないことを確認しながらもう一度読む。
やはり、見間違いではない。
玲子は座りなおした。
これは、私にもやってあげられることがたくさんありそうね、そう思った。
そして、ワードを立ち上げた。
せっかく教えてあげる以上、遠慮せずに書くことを決意した。
そして、まず書いた。
「乙から書くなんて、お前はバカか!」