司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成19年度旧司法試験民事訴訟法第2問(玲子のひとりごと)

平成19年度旧司法試験民事訴訟法第2問(玲子のひとりごと)

問題文

第2問
甲は,乙に対して貸金債権を有しているとして,乙に代位して,乙が丙に対して有する売買代金債権の支払を求める訴えを丙に対して提起した。

1 甲の乙に対する貸金債権の存否に関する裁判所の審理は,どのようにして行われ
るか。
2 乙の丙に対する売買代金債権が弁済により消滅したことが明らかになった場合,裁判所は,その段階で,甲の乙に対する貸金債権の存否の判断を省略して,直ちに甲の丙に対する請求を棄却する判決をすることができるか。

3 裁判所は,甲の乙に対する貸金債権は存在し,乙の丙に対する売買代金債権は弁済により消滅したと判断して,甲の丙に対する請求を棄却する判決を言い渡し,その判決が確定した。当該貸金債権が存在するとの判断が誤っていた場合,この判決の既判力は乙に及ぶか

 

この問題か・・・

1は当事者適格の問題よね。だから職権調査事項になるはず。それで、当該債権が存在しないことになれば、請求却下よね。

職権探知主義もはたらくんだったかしら。

2は悩ましいわね。

こういう判決を出すと棄却判決になるわけだけど、乙に対して不利益よね。

でも出さないと、結論が見えているのに、なお余計な審判をしなければいけなくなるわ・・・

①甲の乙に対する債権不存在→却下判決→乙の丙に対する債権の不存在に既判力なし

②甲の乙に対する債権存在→棄却判決→乙の丙に対する債権の不存在に既判力あり

ということになるから、問題は

「当事者適格を持たない当事者による訴訟追行により、被代位者の権利に既判力を及ぼすことの当否」

ということになるわね。

そういう被代位者に既判力が及ぶことが例外的事象であることを考えれば、否定的に解するべきではないかしら。

3は2と関連した問題ね。

私が2のところで書いたのは、要するに

「当事者適格なき乙の訴訟追行結果は丙に及ぼしてはならない」

ということよね。その観点からすると、この3でも既判力は丙には及ばないと解するべきね。

ただそれだけではさびしいし、何か足りない気が・・・

「既に訴訟は終結して、一応請求棄却判決が出ている」という時間的な側面をとらえるべきかしら。2では訴訟中だからその対比ね。

まあそれでも既判力は及ばないと解するべきだと思うから、後は再審とか再訴とか何か書いて終了かしら。

さて、答え合わせを。

 

 

 

 

(出題趣旨)当事者適格の訴訟要件としての訴訟上の意義と その審理のあり方を問う問題である1では,当事者適格が職権調査事項としてどのように審理されるかを,その存否の判断資料の収集方法を中心に論ずべきである。

2では,当事者適格の存否の判断を省略して直ちに請求棄却の本案判決をすることの可否を見解の対立も踏まえて論ずべきである3では,当事者適格を欠いていることを見誤った確定判決に,判決としてどのような効力が認められるかを論ずべきである。

 

1はばっちりね。職権調査事項であることと、証拠資料で職権探知主義と。

2は反対説に配慮。

3は「確定判決」と書いてあるから、時間的な問題をとらえることが大切ということね。

 

では答案を。

 

 

 

 

第1 小問1

甲の乙に対する貸金債権の存在=甲の債権者代位権(当事者適格)を基礎付ける

→当事者適格は訴訟要件
(原則)訴訟要件の存否→職権調査+職権探知

∵訴訟要件の多くは公益的要請に基づく

(例外):私益的訴訟要件については,弁論主義

(例外):当事者適格や訴えの利益のように本案と密接に関連する訴訟要件→弁論主義

本問
甲の乙に対する貸金債権の存在=当事者適格を基礎付ける事実→弁論主義

(債権者代位訴訟においては,訴外の被代位者の手続保障を考慮→訟資料の収集について,職権探知が妥当する)

第2 小問2について
(原則)訴訟要件は本案判決の要件→審理必要
(例外)訴訟要件の中には,無益な訴訟を排除して訴訟経済を図る趣旨→その場合には訴訟要件を審理しないで実体判決をした方がより訴訟経済に資する
→債権者代位訴訟における被保全債権の存在は,訴訟経済を図る趣旨のものではない+被代位者の保護

→棄却判決不可

 

第3 小問3について
既判力:訴訟担当においては,被担当者にも既判力が及ぶ

∵実質的利益帰属主体に既判力が及ばす必要性と,担当者による代替的手続保障

保全債権の存在は必要か(裁判所は実体を審理して棄却判決を出したのではないのか)

→必要∵被保全債権がなければ真剣な訴訟追行が期待できない

→既判力は及ばず

書いてみると、問1は訴訟要件にもいろいろあるっていうのが難しいわね。

そして、当事者適格だから職権調査+職権探知と書いたうえで、「しかし」ということでもうひとひねり加えるところができればいいのねー

なかなかそこまではいかないけど、でもちらっとは考えたんだけど・・・この被保全債権の存否の判断、通常は本案審理されるんだけどなあって。

問2と問3の違いは今一つよくわからなかったけど、

「真剣な訴訟追行は期待できない」

っていうのが絶対のキーワードって感じね。