司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成28年度司法試験刑法(玲子の指導)2

玲子は、横領罪について記載していたことへの衝撃からようやく立ち直り、再び答案に向き合った。

「次は甲の罪責ね・・・って」

「甲!」

・・・センスないわねーと玲子は思った。

丙をどうするつもりかしら。丙の行為も甲に負わせるんでしょ、それならまず丙について書かないとダメじゃない・・・

そう、玲子は思った。

しかし、紅茶の力は偉大である。

このぐらいではもう動じないのだ。

「うわーまた強盗予備罪・・・もういいわよこの犯罪は」

とか

「住居侵入ももういいから・・・」

とか言いながら、甲のところを読み終える。

読み終える・・・

「え、読み終わったんだけど・・・甲・・・」

 

「ふざけんなー丙はどこ行った!強盗はどこ行った!」

 

いくら眺めても、そんな記載はないのである。

私、違う問題文を見てるのかしら・・・

そう考えたくなる玲子であった。

(丙は、甲が予定しない登場人物である。その丙の行為を甲に帰責させない場合、どこまでが甲の罪責になるのかは難しい問題となる。

その点が、きれいに抜けているのだった)

 

その後、丙についての記載を見るが、意外ときちんとかけており、承継的共同正犯についてもふれてある。

また、丁についても悪くない。ちょっと読みにくいけど、及第点。

 

「なんだ、これだけ興奮したけど、意外とちゃんと書いてるじゃない」

そう思い、ちょっとだけコメントで誉めたのだった。

 

コメントを書き終わった玲子は、ふと考えた。

甲の罪責ってどうなるのかしら。一般的に考えてみると・・・

 

甲が乙に指示を出した。「Aから金銭を奪ってこい」。そこで乙がAのところに行く途中、友達の丙に協力を仰いだ。そして、二人でAから金銭を巻き上げた。

 

こういう場合、甲の罪責ってどうなるのかしら。

甲と乙が共同正犯、乙と丙も共同正犯、だから甲と丙も共同正犯?

いや、理屈はそうじゃない・・・

甲はきっと乙としか共同正犯にならないわ。

じゃあ丙はどう扱うか。これは、乙の行為が拡張されたとみるんじゃないかしら。いわば乙2ね。

乙は共同正犯として、丙の行為にまで責任を負う。つまり乙の責任は拡大したのね。そして、そのような拡大した乙の行為について、共謀により甲も責任を負うのなら、当然、甲は丙の行為にまで責任を負う。

乙=甲(共同正犯関係)

というのが基本で

{(乙+丙)=乙}=甲(拡大した乙と甲が共同正犯関係)

ということになるんじゃないかしら。

 

まあ、こんなこと考えても仕方ないけど、共謀したわけでもない丙の行為を甲に責任取らせようと思ったら、それなりに慎重にやらないと、甲に失礼よね。