司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成21年度旧司法試験刑法1(玲子のひとりごと・答案編)

平成21年度旧司法試験刑法1

答案

第1 乙の罪責

1 乙は、甲と共にAの頭部を殴打し、Aを路上に転倒させた上、丙と共に倒れたAの頭部を多数回殴打する暴行を行った(以下、総称して「本問暴行」といい、そのうち各人が直接行った部分を各々「甲の本問暴行」、「乙の本問暴行」、「丙の本問暴行」という。)。

2  まず、甲との関係では、協同正犯が成立する。次に、丙との関係では、共同して暴行を行っている以上明示ないし黙示の意思連絡があり、共同正犯が成立する。

3  以上から、乙は、本問暴行すべてに責任を負うため、傷害致死罪となる。

4 正当防衛を検討するに、やむを得ずした行為かどうかは行為の必要性・相当性によって判断するところ、乙が武器を用いていること、Aが路上に倒れた後も丙と二人で反撃を行っていることから、相当と言えず過剰である。以上より過剰防衛となる。

第2.甲の罪責

1.甲につき、乙とは共同正犯となる。
 丙とは共犯関係はないが、同時傷害の特例により傷害の限度で責任を負う。ただし、罪刑法定主義から、「傷害」と規定する刑法207条に致死は含まれないと解する。以上より傷害罪が成立する。

3.また、甲はこの機会を利用してAに怪我を負わせてやろうと考えて反撃に及んでおり、積極的加害意思がある。正当防衛の成立には社会的相当性が求められるため、甲には正当防衛は成立しない
4.なお、乙について過剰防衛が成立するが、36条2項の趣旨は心理的動揺により防衛行為が過剰となる点について責任が減少すると解される点にあり、共犯において責任は連帯しないと解されるから、甲においても過剰防衛と同様に扱うべき理由はない。

第3.丙の罪責

1.乙と共に路上で横たわるAに暴行を加えた行為は、共同正犯により丙が責任を負う。

2 甲の暴行については、同時傷害の特例の適用により傷害の限度で責任を負う。

3 では、甲と共に行った乙の暴行についてはどうか。この点、一連の共同正犯行為の途中から加功する承継的共同正犯については、先行行為の結果を積極的に利用する意思のない限り、加功後の行為によって生じた結果についてのみ帰責されると解する。したがって、本件のように積極的に利用する意思が内場合には、乙の当該暴行は丙に帰責されない。もっとも、同時傷害の特例により、傷害の限度で責任を負う。

 

また、なんか敗北感に打ちのめされるわね・・・

まず積極的加害意思があると書いているから、やっぱり正当防衛は否定した方が素直よね(反省)

それから、乙が過剰防衛になる関係で、責任は個別に、という考え方を示さないといけないわよね・・・

それから丙の暴行も重要ね。甲の暴行、乙の第1暴行(甲と共に行った暴行)、乙の第2暴行(丙と共に行った暴行)、この三つをそれぞれ「どういう理屈で」丙に帰責されるのか、ということをきちんと示さないといけなかった・・・特に乙の第1暴行は承継的共同正犯という理屈は立たなくて、同時傷害で行くんだ、ということまで・・・参ったわねー難しいわねー

 最後に、この答案の元はネットで見つけたんだけど、青色にした部分はコンパクトですごく上手な書き方だわ―と感心したので、手を加えずにそのまま残させていただきました。ついでに言えば、上に書いた気づかなかったことも全部教えていただきました。

大変勉強になりました。