司法試験であそぶ

司法試験について考えたこと

平成29年度司法試験刑法(玲子の指導)4

「さて、では気を取り直して、読みましょうかね」

ひとりごとを言って読み進める。

「なになに、

①財布を抜き取った行為について、まず窃盗罪の共謀共同正犯が成立しないか

②何かよくわからないあてはめをして、成立『しうる』という結論

③しかし、不法領得の意思を欠くのではないか

④不法領得の意思を欠く

⑤だから窃盗罪は成立しない」

・・・

ああ、もう嫌になるわね。

玲子は言葉を出す元気もなく、思った。

「窃盗罪が成立しないのなら、なんのために共謀共同正犯のあてはめをしたのよ、わけわかんない」

「もういいわ、次に行きましょう」

 

答案には、甲の詐欺罪のことが書かれていたが、なぜか、10万円の時計と50万円の時計について、書き分けられていなかった。

何度見ても、かき分けられていなかった。

 

「救いようがないわね」

 

「問題文で似たような二つのものがあれば、必ず書き分けなさいって教わらなかったのかしら」

 

「いうなればラブレターを二人に出すのに、全く同じ文章を書くようなものかしら。

一方に合わせれば他方に合わないし、両方のことをごちゃまぜにすると、誰に書いているのかわからなくなるじゃない・・・」

このたとえはちょっと無理があったかなあ、と思いながら、先に進む。

そして答案を最後まで読み終わった。

 

「・・・」

占有離脱物横領は?死者の占有は?共謀の範囲は?

どこにもないんだけど・・・

玲子は呆然としながら答案を置いた。

 

後輩には、

 

「占有離脱物横領、死者の占有、共謀の範囲等を書いていないのは致命的である」

 

と書き送った。